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電車でいつも会う不気味な男




俺は毎日電車で通勤している。
朝は満員電車の人混みに押し潰されながら出社し、帰りは終電で酔っ払い共に囲まれて帰宅する、そんな生活を何年も続けている

実にくだらない人生だと思う

たまにふと自殺したくなる時がある
電車を待ってるとホームに飛び降りたくなるのだ

でも自殺は悪い事だと言われている
誰が言い出したのか分からないしそれに根拠があるわけじゃない
でも俺は何故かそれを信じている、だから自殺したくなっても自殺などしないのだ。


ある日、仕事でミスをした
それは些細な事なのだが上司はまるで鬼の首を取ったかのように騒ぎまくり俺を怒鳴り散らす
こいつの何がそんなに偉いのか分からないが俺は言われるままにただひたすら頭を下げ謝った

そしてまた終電で帰る……
そんな時にふと自殺したくなるのだ。

だがまたその衝動を押し殺して電車に乗る

周りは俺と同じリーマンや酔っ払いが相変わらず乗車している
お互い目も合わせないでただひたすら電車に揺られる

すると目の前に誰かが座った
その座った人物に何と無く目を向けると、そいつは痩せた男で目があってしまった。

「なんだあいつ…こっち見んなよ」


俺はそう思い舌打ちをして目をそらす


暫くすると視線を感じた
その視線の先を見てみると、またそいつが俺を見てた…
ムカついたのでそいつをにらみ返してやったわ!

するとそいつの顔が「ニタァ」と笑顔に変わったのが見えた

「気持ち悪っ!」

よく見ると、そいつの顔はゲッソリとやせ細り顔色は白く
死人のような顔をしていた。

するとちょうど降りる駅に着いたので
俺は慌てて降りた


この経験をしてから、その後もこの気持ち悪い男と度々遭遇する事になる
いつも会うのは終電で、会うとこっちを見てニタニタ笑ってる

そいつもたまに残業か何かで俺と帰宅時間が被るんだろう


俺は相変わらず、視線をそらしてやり過ごす
何かこいつとは絶対関わってはならないそんな気がしたんだよ
だから俺はキレそうになる気持ちを抑えながらも我慢していた

それから奴と遭遇し出してから
2週間ほど過ぎた時だったか…

また終電で帰宅していた俺は座席に座ってボーと窓の外を眺めながらまた

「死にてーな…」

…なんて思ってた。
何か上から突然隕石でも落ちて来て消し炭にでもして欲しかった、そうすれば死んでも自殺にならないだろ?


幸い俺の乗ってる車両には客は誰もいなくて伸び伸びと座席を占拠出来てた。

暫くすると……急に視線を感じた、あのいつも感じる嫌な視線だ
その時にすぐ奴の視線だとわかった、別に見なくても分かるさ


でも俺はおかしい事に気付いた…今俺が乗ってる車両は俺1人だけだったのだ
他に誰も乗ってなかった、それは伸び伸びと座席を占拠してた俺が1番わかっている

だから隣の車両から人が来たか誰かが駅で乗り込んで来たら
すぐに分かるはずだ
だがそんな気配も全くなかった


なのにあの嫌な視線は感じる
俺の気のせいかと思ってその視線のする方に目をやった


いた!奴だ!

奴がボーと立ち尽くし俺を見ている
相変わらずゲッソリとやせ細った死人のような顔

「うそ!いつの間にこいつ来たんだ」

もういい加減我慢の限界が来て
俺はついにブチ切れてしまい奴に文句言ってやったのだ!

「お前何なんだよ!いつも気持ち悪いんだよ!言いたい事あるなら言ってみろや!」

すると奴はまたニタァと笑顔になって俺の所にスーっと近付いて来た
さすがにこの不自然な動きにちょっとビビって俺は硬直した

奴は俺の顔にそのゲッソリした顔を近づけてこう囁いた

「やっぱり僕のこと見えてたんだぁ〜」

俺はそのまま気を失った……


気が付いたら車掌さんに起こされた、もう終点まで来てる
周りを見渡してももう奴の姿はなかった

俺は何も言わずに電車を飛び出して
友達に迎えに来てもらった…

そしてそれ以来、俺は電車通勤はやめたんだ


今考えたら…奴が現れた時はいつも俺が死にたいとか考えてた時だった
きっと死にたいとかマイナス思考な事を考えたから波長か何かがあって奴の姿が見えたんだと思う

きっと自殺した幽霊だったのかも知れない

そう考えたら、俺はもう死にたいなんて全く考えなくなった